今日,子ども達と一緒に,
Eテレ(NHK教育)を見ながら,夕食を食べていたところ,
子ども番組が終わって,
大人のドキュメンタリーが始まった。
引き続き見ていると,
非行少年の更生を支援し続けている年輩女性を追っていて,
思わず,胸が熱くなった。。。
帰国後は,時間的にギリギリの状況で仕事をしているため,
なかなか携わることができずにいるが,
渡米前は,少年事件が本当に好きで,よく受任していた。
12月に独立したら,少年事件も再開したいと,
心から願っている。
そんな思いを込めて,かつて書いた,
少年についての日記を貼っておきたいと思います。
2010年12月31日 (金)
タイトル:「鑑別所のにおい」
少年鑑別所は,
夏休みのにおいがする。
仕事で,鑑別所を訪れるたび,
いつもそう思っていた。
10代の頃の,
けだるい夏休み。
今日という日が,
どこにも繋がっていない。
そんな気がする毎日を過ごしていた,
10代の頃のにおい。
なつかしすぎて,
胸がしめつけられる,
あの,におい。
警察や拘置所で,
被疑者・被告人と接見するとき,
そこは,ぶ厚い,二重のガラスで,
遮られている。
でも,少年鑑別所の面会室は,
がらんどうな,空間だ。
家庭用と同じ,
小さな白いリモコンで,
エアコンを入れる。
体温も,においも,
そのまま伝わってくる距離で,
話をする。
遮るものは,何もない。
すべてが,そのまま伝わり,
すべてが,そのまま伝わってくる。
少年の付添人を担当するとき,
私は,少年に対して,
「ひとつも疑いを持たない」
と決めている。
証拠と照らし合わせて,
明らかにおかしい点以外は,
ひとつも疑わない。
騙されても構わない。
すべて受け入れる。
まずは,すべてを肯定する。
少年の持つ,
「疑いの目を嗅ぎ取る嗅覚」は,
鋭い。
遮るものが何もないから,
心の波が,そのまま伝わる。
疑いを抱いたとたん,
少年は,貝のふたを閉めるように,
固く固く,何かを閉ざす。
そして,その瞬間,
私の存在は,
無意味なものとなる。
人生の路頭に迷う,少年を見ていると,
他人とは思えない。
私も,10代のころ,同じだった。
いつの間にか,
目には見えない重い鎖が,身体じゅうを覆っていて,
抜け出せない気がしていた,あの頃。
身体を覆う,鎖の重さで,
朦朧としていた,あの頃。
昔の自分を見ているようで,
もはや,立ち去ることは,できなくなる。
ドラマのような,
美しい,立ち直りの物語など,
存在しないかもしれない。
私はもう,大人であって,
少年に寄せる思いは,
ニセモノなのかもしれない。
それでも,寄り添って,
何かを伝えられたらと,
願わずにはいられない。
受け入れてくれる人がいること。
守ってくれる人がいること。
居場所があるということ。
そして,
今日という日は,
明日に繋がっているんだよ
と, 伝えたい。
そんな気持ちで,
鑑別所を訪れていた日のことを,
ふと思い出す。
そして,私は,きっとまた,
少年に会いに行くのだと思う。
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